
住まいの原点とはなんだろう?
そんなことをつらつらと考えるとき、鴨長明の方丈記を思い出しました。
世の中はいつも忙しく動いています。でも、私たちの暮らしの本質は昔からそれほど変わっていないのではないでしょうか。住宅とは、あわただしい世の中から少し離れて身を休める場所。そこで何かを生み出す必要はなく、ただ静かに過ごせればよいのだと思います。
建築家の 中村好文 さんは、住宅の原点を「小屋」に置きました。雨風をしのぐ、できるだけシンプルな場所です。住宅は何かを生産する装置ではなく、安心して身を置くための場所だからです。
映画監督の テオ・アンゲロプロス にはこんな話があります。彼がとてもゆっくりコーヒーを飲むので理由を聞くと、「私はコーヒーを味わっている。あなたたちはコーヒーを奪っている」と答えたそうです。
住宅も同じかもしれません。
一日のうちほんの少しでも、世の中の忙しさから離れ、コーヒーをゆっくり味わえる場所。住まいとは、そんな静かな時間を取り戻す場所なのだと思います。