静かな家

20260309

住まいの原点とはなんだろう?
そんなことをつらつらと考えるとき、鴨長明の方丈記を思い出しました。

世の中はいつも忙しく動いています。でも、私たちの暮らしの本質は昔からそれほど変わっていないのではないでしょうか。住宅とは、あわただしい世の中から少し離れて身を休める場所。そこで何かを生み出す必要はなく、ただ静かに過ごせればよいのだと思います。

建築家の 中村好文 さんは、住宅の原点を「小屋」に置きました。雨風をしのぐ、できるだけシンプルな場所です。住宅は何かを生産する装置ではなく、安心して身を置くための場所だからです。

映画監督の テオ・アンゲロプロス にはこんな話があります。彼がとてもゆっくりコーヒーを飲むので理由を聞くと、「私はコーヒーを味わっている。あなたたちはコーヒーを奪っている」と答えたそうです。

住宅も同じかもしれません。
一日のうちほんの少しでも、世の中の忙しさから離れ、コーヒーをゆっくり味わえる場所。住まいとは、そんな静かな時間を取り戻す場所なのだと思います。

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佐藤隆幸

佐藤隆幸

美大で油絵を学んで、手伝いのつもりで入った設計事務所の先生が茶道の名人。茶室の真髄を目の当たりにして(驚愕して!)そのまま建築設計の道へ。 モネもフェルメールも等伯も、バウハウスも現代建築家の諸作品も、僕にとっては同じ地平にあります。 住宅建築で大切なことは、調和とバランス。内と外の関係性。日常と非日常をゆるやかに結びつけるための調和であり、私たちの暮らしが豊かなものになるために関係性をデザインすることは、とても重要なことなのです。 玄関へ向かう路地は、日常から非日常へ移行するハレの空間。リビングから見える緑や眺望は、何ものにも代えがたい生活の宝物です。 住宅設計に携わって30年余り。大分から大阪へやって参りました。休日に京都の古寺を歩くのが楽しみで、クラシックの古いレコードも楽しみのひとつ。根っからの活字人間なので 谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」がmilestoneです。
佐藤隆幸

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